「富久」 金原亭馬生(10)

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前回の予告通り、「富久」の聴き比べ、その2は先代の馬生師匠です。
なんと、「一丁入り」の出囃子で高座に上がる、貴重な音源の1つと言えるでしょう。
あいにく、いつの録音のものかは確認できていませんが、馬生師匠が一丁入りを出囃子に使っていたのは、本当に最晩年のしかも数ヶ月とのことです。
声の方は、まだしっかりしています。

噺の方はって言うと、マクラらしいことをあまり語らずに、噺に入ってしまいます。
噺自体は毎度おなじみのままですが、初めてこの噺を聴くには、マクラでの伏線やら予備知識の説明などがあった方が分かりやすいです。

あまりにもサラリとサゲの言葉を言ってしまうこともあり、初心者向けではない、音源と言えます。

この噺はやはり12月に掛けるものでしょうから、亡くなる前年である1981年〈昭和56年〉の12月の録音ではないかと推理してみました。

「そば清」 金原亭馬生(10)

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上野・鈴本演芸場のそばに、先代(十代目)の馬生師匠がよく通っていたという、蕎麦屋さんがあって、以前若手噺家二人に連れて行ってもらったことがあります。

当代馬生師匠の話によると、先代は蕎麦を注文するものの、あまり食べることなく、お酒を飲んでいたそうで、弟子たちが師匠の分の蕎麦を食べることがしばしばだったそうです。

前述の蕎麦屋でもそんな感じだったのかと思って、軽く日本酒も飲みながら、少々蕎麦も食べました。
「天抜き」という耳慣れない注文もしてくれました。
「天ぬき」とは、天ぷら蕎麦の蕎麦抜きです。「天抜き」だからと、天ぷらを抜いたら単なる、かけです。
「天抜き」が通じるところ、通じないところがありますが、メニューには載っていません。
蕎麦がなくても、天ぷら蕎麦と同じ値段というのが、普通だと聞きました。

さてお会計、3人で少々の日本酒を飲んで、1万円オーバーでした。
お蕎麦屋さんで、1万円オーバー。
東京の蕎麦屋は怖いです。

さてさて、そういうくだりで、本日の演目は「そば清」です。
十代目金原亭馬生師匠に語ってもらいます。

取り上げるCD音源は、ここのところ他の演目でも取り上げているシリーズで、「コロムビア創立100周年記念!落語決定盤 十代目金原亭馬生 ベスト」です。
2枚組のCDに収録されている演目は、
 1. あくび指南(あくびしなん)(1975年6月2日 たいめい軒)
 2. そば清(そばせい)【昭和55年10月18日 上野本牧亭】
 3. 目黒のさんま(1975/5/27 本牧亭)
 4. 笠碁(かさご)(1974/2/16 紀伊國屋ホール)
 5. 幾代餅(1980.2.18本牧亭)
です。

出囃子が中の舞ですから、トリ席での演目だったようです。
軽いタッチで、蕎麦を手繰っている感じが音からだけでも伝わってきます。

最近では、孫弟子の馬玉師匠(元・馬吉)がやる「そば清」で、「とろろ蕎麦」を啜るところという微妙な、なかなか笑える演出があります。

「ざるや」 金原亭馬生(10)

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春ですね。
4月1日ですから、演技の良い噺ということで、先代の馬生師匠に登場願い、「ざるや」です。
アゲアゲのめでたい噺です。
結構短めの噺だと思いますが、出囃子が「中の舞」で、最後に「追い出し」の音がしていますから、トリ席で掛けたものですね。
収録時間は、19分少々。

新真打の馬玉(ばぎょく、元馬吉)師匠が先日、テレビの放送分でこの噺を掛けていました。
その後のインタビューでも答えていましたが、本人も大師匠のこのネタは意識している様で、雰囲気がとても似ていました。

「下谷と言わずに上野」、「ウエダノボル」なんて、目出度い、上げ調子の言葉が続きます。

今回取り上げた音源のCDは、「十代目金原亭馬生十八番名演集」シリーズの10枚目です。
このCDは前の9枚目から続く、「お富与三郎」の後半部分がメインで収録され、それに加えての「ざるや」です。

「お富与三郎」については、通しでいずれ、また別の機会に。